2012年08月04日

セピア色の記憶と映像 ~たま復刻版DVDによせて~




今年の6月に、4人時代のたまの映像作品がDVD化(野球/たま)されていた。1990年末にグローブ座で行われたライブから抜粋して収録されビデオやLDで発売された映像がDVDとして復刻されたと、いう。

過去の映像が発掘されて、再販され、入手できるのはとてもうれしいのだけれど、その当時の撮影状態からして、大画面で観るとどうしても画質が粗くなるのは仕方がないとはいえ、やはり、ちょっと悲しい。なき

学校で映像関係についても学び、趣味や部活でもそういった方面が専門の娘は、そんな画質の粗い映像を観ていると「酔いそうになる。」という。”たま”というバンド独特の音楽の方向性もあって、「なんだか、怖い。」ともいう。

たしかに彼らの音楽世界の中には、私が幼かった頃の夏休みに、父方の田舎に遊びに行って、蔵の中に保管してあった従兄弟の本を読ませてもらっていて、ふと蔵の奥に何かの気配を感じた時のような、母方の山の家に遊びに行って、離れの和室に飾ってある能面の表情がなんだか怖くて、ひとりでそこに泊まれなかった時のような、怖いという気持ちと共に、どこか切なくて、なつかしいものがあるような気がします。

写真が色あせてセピア色に変色することが時間の経過を感じさせたように、古い映像の画質の粗さもまた、そこに封じ込められている場面からの時間の経過を象徴しているのかもしれません。

どんなに機器の性能が向上して、きれいな映像を残せるようになっていったとしても、過ぎてしまった過去の場面をそのまま再現することはできない。

人は時を重ねて、若さとひきかえに人生経験を得て風貌を変えていき、周囲の環境も変化していく。

それでも、どんなに時が流れても”変わらない何か”を求めて、なつかしい人や場所に会いたくなるのは、「夏」だからかもしれないなぁ...と、なんとなく思います。

もうすぐ、お盆ですね。


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先日、義母と共に主人の父方の本家へご挨拶に行き、そこで伯父と伯母から昔話をうかがっていました。

古い過去帳に記載されたご先祖様の記録の年号に安政という文字を見つけ、「あの、安政の大獄の年号ですよね。。。タラーッ」と言ったり、”伯母の実家には関ヶ原の合戦で生きのびた先祖の刀が大切に保存されている。”といった会話の中では、伯父が戦争に行って復員してきた当時の話などは、まるでつい最近のことのような感覚になってしまいます。

もちろん、今までに何度もうかがっている話もありますが、むしろ、”お仏壇に手を合わせた後、お茶をいただきながら、おきまりのように昔話をうかがう”というそんな流れが、昔、お盆に私の父方の田舎を訪れた時の記憶と重なって、さながら”夏の儀式”のような気がします。


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毎日、日常の日々に追われ、先のことを考えて今をひたすら積み重ねていく中で、ふと、立ち止まり、けっして忘れている訳ではないけれど、遠い記憶の中でひっそりと息をひそめるようにしてうずくまっている思い出の数々を大切にそっと抱きしめるような、そして、そうすることによって、疲れて擦り減っていた自分自身をも癒すような、そんな時間のために、日本にはお盆休みがあるのかもしれません。



  


Posted by Dreamer at 06:47音楽の話