2017年03月12日

覚悟と共に生きる、勇気

昨年12月と今年2月、私たちが続けて南伊豆の弓ヶ浜に訪れたのは、南伊豆の風景の美しさやさまざまなグルメの魅力からだけでなく、そこで出会った1軒の宿の魅力がありました。

オーナーご夫妻が営んでおられる、全室3室の小さな宿。
きれい好きな奥様がていねいに整えておられるためどこも清潔感があふれていて、シンプルでありながらなにげなくさりげないところにご主人と奥様のこだわりが見え隠れしていて、接客にもそういう姿勢でのぞまれているため適度な距離感でのお心遣いが伝わってくる。

ネットの評価でも1度そこに泊まった人はほとんど好印象で、弓ヶ浜の海岸まで約30秒で波音が部屋まで聞こえてくるというロケーションとおいしいお料理の数々も絶賛されていて、”必ず、また訪れたい”と言われています。

その宿に最初に泊まった時、案内された部屋で奥様から説明をうかがっていた時、意外に思ったのは、”もし、万が一、東海地震が発生したら...”という場合の避難場所と避難経路についての詳しいお話をきちんとされていたことでした。それは、とても大切なことなのですが、楽しい旅先での観光気分と、たんたんとていねいに話されるその内容は、やはり、しっくりこないものがあって、正直言うと、とまどう気持ちもありました。



「”万が一とはいえ、それが今日明日に起こらないとは限らない”という意識を、常に持っていなければいけないと思っています。」

そんなふうにおっしゃる奥様のお話をうかがいながら、”私は過去に阪神淡路大震災に遭遇して、いろいろなことを経験していながら、そういう強い覚悟と共に、日々を生きる勇気を持っているのだろうか...”と、思っていました。
(それは、実際のところは、その当時のさまざまなことを忘れなければ、いろいろな想いを置き去りにしなければ、その後の日々を前向きに生きてこれなかったかもしれない...という、自分の弱さを痛感したということなのかもしれません。)


弓ヶ浜の散策の際に、教えていただいた宿から徒歩3分のところにある津波避難タワーを訪れました。



海抜15mだという津波避難タワーは、震度6強、津波の高さは13mを想定して建設されたとのことです。



美しい海の風景と、日々をていねいに真摯に生き、観光客を感動させる宿を守り続けておられるご夫妻の生き方。

そして、そのすぐそばにある、万一の場合の自然の脅威を物語り、圧倒するような津波避難タワーの存在。

たくさんの楽しい思い出と共に、それらもまた、南伊豆への旅行で不思議な感銘を受けた思い出となりました。



そして、先日お遍路で高知を訪れて巡礼している時にも、町中のところどころにあった”海抜○m”という標識や、移動途中の道沿いに避難場所への誘導の看板をよく見かけ、それは、そんな南伊豆の思い出のおかげで、私の中に、”たとえ観光先であったとしても、きちんと危機意識を持ち続ける”という視点が出来、意識がむくようになったのかもしれない...と、思いました。